「起業家に必要なものは自信じゃなくて勇気だよ。自信って単なる裏付けのことでしょ?」と言われてぎょっとした。そして思わず反論した。
「だって、自信がなければ勇気は出せない訳だから、きちんとキャリアをつけて、自信につなげないと勇気なんてものは出せませんよね?」すると彼は言った。「違うね、自信はなくてもいいから先に勇気がなければだめだ。勇気がないなら起業家になるべきじゃないよ。」
それじゃ困ると思って、また喋る私に彼は驚くことを言った。「あのね、みんな人脈が大事って言うけれど、人脈ってしがらみのことでしょ。人脈の本当の意味はね、自分が必要な時に必要な人を捜し出して会いに行き、ちゃんとわかってもらって協力をお願い出来る能力のことを人脈っていうんだよ。本当に力のある経営者というのはね、あなたのキャリアやプロフィールを確かめてから力になる訳じゃないよ。あなたの目をみて、あなたの真実を感じてそして力になるんだよ。そんな人と知り合っていかないとだめだし、そんな勇気がないんじゃ、起業家には向いていないということになる。自信より勇気だよ。」
う〜ん・・・と唸ってしまった。唸ったついでに「すごい人と会ってしまったもんだ。」と、今日の出会いに驚きと不思議さを感じないわけにはいかなかった。
この人とはあるパーティーで二言言葉を交わしただけだった。それから二週間ほどたって、オーストラリアの起業と日本の起業について、話をしてみませんかというメールをもらった。私は彼のことは、オーストラリアに住んでいる人で、今は日本のプロジェクトに参加するために戻ってきているということ、そして先日のパーティーでは、昔の学生時代からのバンド仲間とボランティアで演奏にきているということしか知らなかった。オーストラリアと日本の起業の違いには正直言って興味がなかったが、何故かわからないが、この人には会ってみようと思ってメールに返事をしたのだった。
「今日は突然のメールにも拘わらず来てくださってありがとう。」と私よりは七つも年上だというのに丁寧にご挨拶をされた。「あなたの目を見た時に、この人は自分の足で立っている人だなぁと思いました。それに、きっとこの人はヘンなオンナに違いないとピンとくるものがあって思い切ってメールをしてみたけれど、やっぱり僕の直感はまだまだ冴えていてよかった。日本でこんなにヘンなオンナに会えるなんて、今日は実に楽しかった。今度はオーストラリアで飲みましょう!」帰りがけに彼はそう言って手を差し出した。「あなたこそ五十も過ぎてそんなに素直で正直で実にヘンないい男ですよ。」ヘンなオンナもそう言って手を出した。
『自信』より『勇気』か・・。次のステップに進む時に一番必要なものはお金でもなければ自信でもない、きっと勇気なのかもしれないなー。 |