ドアを開けて1歩外に出たら、そこは満開の桜木の下に繰り広げられ
た大饗宴の世界だった。
桜吹雪が舞う中で、饗宴動画は私の瞳に画面一杯に広がった。
せいぜい、15〜20人位の花見の会だと思って出かけた私は、顔も姿も
見えない、向こうの端までがこの団体だと聞いて、箱入りおばさんは
箱から出た状態で、驚きのあまり、キョロキョロするばかりだった。
この観桜会は、東京に住んでいる「青森県」という故郷を同じにする
人たちが集まった会で、高校連合会、地域支部、任意団体、その他青
森県出身のさまざまな団体から 200人が集まって、懐かしい故郷の料
理を作り、持ち寄っているのだという。しかも、もう何十年も続いて
いるのだそうだ。
なぜ、これまで30年もの間、私には一度も連絡がこなかったのだろう
か。
なぜ、一度も周りから情報が入ってこなかったのだろうか。
不思議だった。
理由は、私の出身校が高校連合会に参加していず、また出身町も、地
域連合会に登録していないそうなのだ。しかも、この会は60代、70代
の人が役員だから、インターネットで情報が流れるということもあま
りないのだった。
もし、この会を昔から知っていて仲間に入っていたら、今私が「東京
から青森おこし」をライフワークとして、東京であれこれ企画を考え
て苦戦したり楽しんだりすることはなかっただろう。
ここの仲間として交流していれば、わざわざ弘前から母さんたちを呼
んできて、食事会なんかをやらなくても、仲間もいるし懐かしい料理
だって食べられるのだ。自分で立ち上げることはしなかっただろう。
知らないものだからずいぶん遠回りすることになってしまった。
でも、なぜ、今頃になって私の目の前にこんな風景が現れたのだろう?
宴会のごちそうは、盛りだくさんだった。後ろの席のおじいさんたち
のごちそうが、私のチームより一段とおいしそうだったので、図々し
くお皿をもってもらいに行った。
「お〜、食え、食え」と歓迎してくれ、どこの出身かとか、自分たち
がどんなグループなのか、一生懸命話してくれて盛り上がった。
聞いてみると、その人たちは、実は私が以前一度訪ねて行ったが会え
なかった、新宿で居酒屋ライブを経営しているオーナーが中心になっ
た会のメンバーの人たちだった。
しかも、そのメンバーは、県人会での重要なポストにいる人が多く、
あっという間に、「おめも会に入れ、入れ。おめだば、会にいれでも
いい。あの人が事務局長だから、挨拶してこなが。あの人が副会長、
あの人が・・・」ということになったのだった。
さらに、兄弟が実家で水産加工の店やってるから下北でなければ手に
入らないものも簡単に手に入れられるという人もいた。
地元の季節の素材を取り寄せて、じゃっぱ汁を作ったり、懐かしい料
理をみんなで作って食べる食事会もやっているという。
私はと言えば、第1回目の食事会は、ネットワークもないために、集
客ができず、夢にまで見て苦しんだ。
今年第2回の津軽の伝承料理を食する会は、おばさんたちが助成金を
使うことができたので、やっととんとん企画になった。
私は、過去3年の間に、国の大きな助成金申請に2度も落ち、間違い
なく通るだろうと言われた県の申請にも今年落ち、神様はどうしてこ
んなに意地悪をするのだろうと思っていた。
すると、神様はどこか遠くで「こらえてや、こらえてや」と言うばか
りだった。
「諦められないんだから、こらえるしかないじゃろが。
まったくモーッ。」
と神様に怒ってもしょうがない。
来年は、人と人が繋がる場づくりを目的にした「コミュニティレスト
ラン」の開業を予定しているので、仕入れの準備も店の準備も何もか
もこれからだ。
この店を拠点に、全国の農業・漁業を少しでも応援したい。
東京で頑張っている起業家や、故郷のない人に地方のおいしいものを
提供して、温かい気持ちを伝えたい、繋げたい。
そんな私の前に、ふるさとの宝の人脈がひとかたまりになって、飛び
込んできたのだった。ようやく、何かが動き始まるという予感にワク
ワクしている。
機が熟す前にあれこれ動いても、早過ぎると、事は動かない。
でも、動かなければ機は熟してこない。
人はそのギャップに耐えられなくて諦めるのだろうか。
諦めたとき、人はそれは失敗とよび、諦めない限り失敗はこないと、
誰かが言っていた。
せっかく神様が最善のタイミングで最善のチャンスを与えようと、
「こらえてや〜」と言っているのに、諦めて辞めてしまっては、チャ
ンスの行き場がなくなってしまう。
だから、もうちょっと我慢しよう、私はそう自分に言い聞かせていた。
特殊な才能や特別な能力がなくても、チャンスをきちんと掴める直感
の働く人、やりたいことを追い続けていける粘り強い信念と行動、信
頼に値する人間に成長せねばと思った。
そしてそのために今必要なことを考えてみた。
1.走りすぎないこと(全速力で走らない。夢中になりすぎない)
2.諦めないこと (コツコツと続ける。楽しめることをする)
3.直感を磨くこと (出会いを作る。過去を想う時間を作る)
0から始める私の夢も、どんなことになるかはまったくわからない。
自分のやりたいことを実現させるために、協力をお願いし、力を借り
ながら、多くの人に喜びや安心・安定を提供したいと思っている。
桜が満開になって、春になった。
頑張ろう。さあ、ゆっくり頑張ろうと思っている。
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